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執筆者の写真ぺ ホス(裵 鎬洙)

「時間軸が違う」という見方をしてみると



「時間軸」が「途切れている」or「短い」側面がある


私たちは、時間に連続性があるのは当たり前だと思って生きています。


ですが、認知症の記憶障害による影響を受ける認知症当事者の方は、時間軸が「途切れている(一部抜け落ちる)」か、目の前の状況を把握するために必要な「連続性(つながり)のある時間が短い」という体験をしているのではないかと思います。


この時点で、世界の見え方が違う(体験している世界が違う)と言えると思うのです。


認知症アセスメントツールに抱いていた違和感の話


わたしが認知症ケアについて本格的に勉強をしたきっかけは、「認知症の人のためのケアマネジメント・センター方式」というアセスメントツールでした。その後、センター方式よりコンパクトなツールとして誕生したのが「ひもときシート」でした。


いずれのツールも、いまは事例検討や研修等で、教育ツールとして活用されているようですが、このツールに、わたしは違和感を感じていました。


言うまでもなく、いずれのツールも認知症介護研究・研修センターの監修のもとで作成された非常に有効なツールなので、活用した方がいいことに異論はありません。


ただ一つだけ、わたしは、これらのツールに足りなかったと思っているのは、「時間軸」の観点です。


いずれのツールも、時間軸として、「過去」や「現在」を捉えますが、「いま(その時、その瞬間)」に着目する観点が抜け落ちています。


「現在=数日〜数週間」の状態の情報に基づくことで、見えることももちろんあるのですが、そうすると、「時間軸が途切れているor短い」当事者の方が体験している状況に関する情報が、抜け落ちてしまいます。


1回1回、別々の理由があるとしたら?


例えば、「帰りたい」という声も、朝と昼と夜では、まったく別の理由によって引き起こされている可能性があると、わたしは見ます。


もしかすると、以下のような要因によって引き起こされているかもしれません。

<朝>

家の鍵を閉めてきたかしら?と気がかりになっている

<昼>

ご飯たべてちょっと眠いから横になりたい

<夜>

自宅の布団以外だと寝付きにくい


このように、1回1回が別々の理由だとしたら、それぞれの理由に適った対応方法があるはず。


ところが、「現在」の様子とひとまとめにすると「ずっと家に帰りたいと言っている=帰宅願望」と表現され、「帰宅願望がある人」というフィルターができてしまう。


そのフィルターがあると、上記のようなその時々に示しているサインに気づかない、あるいは気づいても軽く扱ってしまうということが起こりかねません。


わたしはそうなっていることに、気づきにくくなることを回避したいんですね。


「いま」を生きている認知症当事者の方に関わるのですから、「いま(その時、その瞬間)」に関心を寄せ、小さなサインを見逃さない、そういう専門職が増えることを心から願っています。

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