「相性の問題」ではない可能性を知る
どのスタッフが関わってもうまくいかないのに、なぜか、特定のスタッフが関わると、うまくいくーというケース、あると思います。
同じようなやり方(かける言葉や、手順など)で関わっているのに、なぜか、特定のスタッフだけうまくいくとなれば、ちょっとうまくいかない理由がわからないので、多くの場合、「相性の問題」と片付けがちです。
それは確かにあるかもしれませんが、そう結論づけてしまうと、少なくとも2つの悪影響が生まれるということに着目してみてほしいのです。
2つの悪影響
相性が良いスタッフが対応する回数が増えて、業務(場合によっては負担)が偏るという問題
うまくいかないスタッフに、苦手意識をもたせてしまうという問題
「相性」ってなんだか正体がはっきりしませんよね。だから、どうすれば「相性」が良くなるか?という観点を持ちにくい。
そして、合うか、合わないかという文脈で使われる「相性」って、なんだか固定的で変えられないもののような質を含んでいるので、心のどこかで「仕方ないよね」という諦めに似た感覚が強くなってしまいがちです。
見落とされがちな着目点は…
観るポイントは複数ありますが、研修等で、わたしが強調して、必ずお伝えするポイントを、一つだけ公開しちゃいましょう。それは・・・
「(その時、その人に関わる時の)自分自身の構え」です。
ここで、印象深いエピソードを一つ紹介します。
とあるグループホームで、スタッフが入浴にお誘いしても「いいわ」と断られる方がいました。
スタッフ:Aさん、お風呂の順番が来たのでいきましょうか
Aさん:昨日入ったからいいわ
スタッフ:(いやいや、昨日入ってないし…困ったなぁ)
で、いつも断わられた後に、時間を変えたり、人を変えたりして誘うんですね。
それで、お風呂に誘導できる時もあれば、撃沈する時もあったんだそうです。
そこで、スタッフのAさんに「構え」を変えることを試してもらいました。
その結果はこちら。
スタッフ:Aさん、お風呂の順番が来たのでいきましょうか
利用者A :そうか。ほな、いこか。
スタッフの方、びっくりしたそうです。
むしろ、「お風呂、いくんか〜いって思いました(笑)」と笑ってました。
ご覧いただいてわかるように、ビフォアーとアフターの誘い方(声かけ)はまったく同じなんですが、結果は真逆。こんなエピソードを聞くと、何を変えたのか、気になりますよね。
どんな「構え」をどんな「構え」に変えたのか?
これね、「構え」と言われると、ちょっとなじみが薄い人にとっては観にくいかもしれないので、このスタッフの方の例で説明しましょう。
変更前の「構え」:「声かけして、断られたら厄介だな」
変更後の「構え」:「断られても、ま、いっか」
ビフォアーとアフターの違いってわかりますかね?
ビフォアーは、「断られることは、あってはならないこと(良くないこと)」という価値観が背景にあり、まさに身構えながら声かけをしていました。
アフターは「断られることは、あってもいいこと(悪いことでもない)」という価値観が背景にあり、Aさんに声をかける瞬間は、ニュートラルな「構え」で声かけをしていました。
「構え」は、「心構え」「姿勢」「態度」と言い換えることができます。
今回のAさんのエピソードからもわかるように、うまく関われる時と、うまく関われない時の違いは、関わる前(関わる瞬間)の「構え」による影響が考えられるのです。
わたしは、介護や医療に携わる専門職の皆さんに、その専門性がいかんなく発揮されるように、対人関係力(人に関わる力・働きかける力)に磨きをかけてほしいという思いがあります。
「構え」を変えるだけで、やり方を変えずに、結果を変えることができる。
この「構え」の面白みを体験する人が、一人でも多く増えることを願っています。
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