ぺ ホス(裵 鎬洙)

2020年9月22日4 分

「たまたまだよね…」と保留した先にあるもの

その口臭は、ただの口臭ではなかった

 わたしの友人・Hさんから聞いた話です。

 Hさんは、総務部で係長を務めていました。彼の元には、数人のスタッフがいたのですが、その中の一人の女性スタッフと面談をしている時に、「ん…ちょっと口臭がするな…」と感じたそうです。

 「今日だけ、たまたまかもしれないし」と自分に言い聞かせるように本人に伝えなかったHさん。翌日も、その翌日も、やはり口臭がしましたが、やはり、そのまま伝えると傷つくよなぁと思い、かといって誰かに代わりにいってもらうわけにもいかず、「言いにくいから」と言わないことに決めたんだそうです。

 確かに口臭って、タバコを吸った後、コーヒーを飲んだ後は臭いますが、その後は時間の経過とともに臭わなくなる人もいますし、一方で歯磨きが不十分で歯間に食べカスが残っている人や、入れ歯の洗浄が不十分な人の場合は常に臭うということがあります。

 いずれにしても、口臭って、相手が気づいていないことが多く、それを指摘すると相手にイヤな思いをさせることになるよなと思って、言わない選択をすることが多いように思います。

 ところが…その女性スタッフの方、実はガンをわずらっていたようなのです。
 

 そして、ガンをわずらっていると、まれに特有の口臭を発することがあるそうです。今回は、医師がその口臭に気づき、検査をして発覚したということですので、どうやら彼女の口臭はガンが原因だったようなのです。その後、手術をして寛解してからは、その口臭は一切なくなったので、間違いなさそうです。
 

「たまたまかもしれないし」と保留

 口臭や体臭って、確かに、言いにくさが伴います。
 

 それを言わずにいるのも一つの選択ですから、「必ず、相手に伝えましょう」ということを言いたいわけではありません。

 今回のエピソードで見逃してほしくないところは、「今日だけかも」「たまたまかも」と自分に言い聞かせるような解釈をつけて保留している点です。

 これ、結構、わたしたちやっていますよね。

・プライベートで何かあったのかな
 
・今日は寝不足なのかな
 
・たまたま虫の居所が悪かったのかな

 このように、相手に言わずに保留する自分を正当化する解釈を、瞬時に発見していますよね。ほんと、ほぼ一瞬で。

 でも、それって、本当に1回だけなら、「今日だけかも」「たまたまかも」っていう話ですけど、2回目、3回目があったら「今日だけ」でも「たまたま」でもない可能性が高いですよね。にもかかわらず、同じ解釈を継続しますね。場合によっては「気のせいかな」くらいの保留のしかたをすることだってある。

 そこ、保留して、状況は変化しますかね?

パートナーシップがあれば保留のプロセスは不要

 そういえば、先日、自分にとって不快な状況が周囲に起きていても、すべて抵抗せずに受け入れ、どなられようが、あれこれ言われようが、「一切、気にもとめない」という達観した生き方をしている人に出会いました。


 
 達観したと表現しましたが、わたしの感覚としては、自分が傷つかないために感情や感覚をOFFにしているように感じたので、少し怖さを感じましたが。

 でも、まぁ、多くの人は、自分にとって不快な状況があれば、なんとかしたいという自分がいることは、間違いでしょう。

 「なんとかしたい自分がいる」

 カレーが食べたければ、食べたいと言うように。
 
 室内が寒ければ、寒いと言うように。
 
 わからないことがあれば、わからないと言うように。
 
 ただ、シンプルに、自分に起きていることを明らかにするように、自分が気になることを言える。

 それが体臭であれ、口臭であれ、寝癖であれ、チャックが開いているということであれなんであれ、言えるというのは、パートナーシップがあればこそですね。

 そして、どんな解釈をつけて保留しようとも、あなたは知っているはずです。「そのことが対処されなければ、その人にデメリットが生じる」ということを。

 言わずに保留して、相手をジャッジするだけのあなたか。
 
 それとも、言うべきことを言って、相手に貢献するあなたか。

 どちらを選ぶかは、毎回、違ってもいいと思います。
 
 ただ、毎回、保留し続けている限り、あなたもその空間に安全を感じないでしょう?

 だって、保留し続けるということは、真実や本心は語られない空間を、あなた自身がつくり続けているということですからね。

 10回に1回くらい、気になることが言えるあなたがいれば、あなたがいる空間はより安全な空間へとシフトしますよ。

 どうせなら、いい空間、つくっちゃいましょう。

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